純文学

  •  寒い階段を駆け上がる。不思議と昨日来たときよりも棟の中があたたかい。今日のほうが寒いはずなのに。走ってきたからかな、とケイコは荒く呼吸をくり返しながら思った。  違うかも、と思ったときにはも... 続きを読む
  •  「ちょっと、ねえ、あさこちゃん!メイちゃん!」  帰りの会が終わったすぐそばから、子ネズミみたいに素早く教室を出ていったあさこちゃんとメイちゃんを追いかける。途中で水野先生から引ったくる... 続きを読む
  •  次の日、ユキちゃんは学校を休んだ。  元から休みがちな子だったから、あさこちゃんは気にせずいつも通り、クラスの女子達と噂話を楽しんでいた。けれど、ケイコの方はというと、昨日あの団地から去ろう... 続きを読む
  •  ユキちゃんのお家は、町の中心にある大きな古い団地だった。  松の木が近くの山に植えられていて、コンクリートでできた建物の群れの周りには、木がほとんどない。ケイコは一年中木や花に囲まれた自分の... 続きを読む
  •  ケイちゃん、と、ケイコは自分を呼ぶ声に振り返った。  「あさこちゃん」  あさこちゃんは少し離れたところから、立ち止まったケイコの横に駆け寄ってきた。  「あたし、今日、お習... 続きを読む