純文学

  •  拙い言葉をあと幾つ積み上げたらいいのだろう。  自分というのものが伝わらない、と感じたのはいつからだったっけ。  覚えていないくらい昔のことのような気がした。  そもそも最初... 続きを読む
  • あの動画を遺し、彼女が亡くなって数十日たったころ、 ひらりと手紙が届いた。 この世界では、死んだ人が一通、450字以内の手紙を送ることができるのだ。 手紙にはこう書かれていた。... 続きを読む
  •  その日、僕はバナナを食べていた。  なぜか、自分で買ってきたからである。なぜ買ってきたか、なんかバナナ食った方が、メンタルがいい方向にむかうよとか、そんな動画を見たからである。つまるところ、... 続きを読む
  •  「ところで、いたいけな少年はこんなところで何してるの?」   「僕のお母さん死んじゃったんです」    「お、奇遇だね。私もつい先日、息子が死んだんだ」  病院の待合室で一人だ... 続きを読む
  •  女は息を切らしながら走る。 低いヒールが叩き出す足音が、陽の落ちた街路に響き渡り、後ろへ後ろへと消えていく。 女は「斉藤」という表札の掲げられた家の前で急ブレーキをかけると、 一直線に門... 続きを読む