サスペンス

  • 金木犀yushi
     平時であればゆっくり歩みたい金木犀の道も今日ばかりは駆け抜ける他になかった。季節は秋。美しい花々を嫌うように降る雨は一層激しさを増すばかりだ。今では日課と呼んでも差し支えないこの図書館通いも今... 続きを読む
  • 時計鳩池湯懐
     白い光が目の前を覆い尽くしていた。それがやけに不愉快で、彼は自分の腕で目の前を遮った。  けれども、その光に違和感を覚えて彼はパッと目を開いた。慌ててスマホを確認する。 「やっべ……寝... 続きを読む
  • 冷たい指で全身をなでられているような、そんな冷気に包まれた部屋。 そこに一人、僕はいる。 引っ越ししたての数日間はいつもそうだ。 ダンボールに囲まれ、慣れない空間に緊張感を覚える。 一緒... 続きを読む
  • 猫は度々、「アイツに捨てられるくらいなら、こっちからどっかへ消えてやる」と言っていた。猫の飼い主が乱暴なのは、この界隈では有名な話だった。ただそういうことは年に1回あるかないからしく、普段は仲良... 続きを読む
  • 私は彼女であるセリナの働くフードコート内にある寿司屋にいた。もともとセリナが働いているとも知らなかった私は驚いた。私はカウンター席に座った。腹が満たされればいいと思っていた私は、注文をしよ... 続きを読む