そこは完全に平面の世界だった。
とても色彩が美しかった。
もちろん僕も平面である。
凄く奥行きはあるのに、平面な街の一角にいるよ。
確か元の僕は、確かにその街にいた。
確かなる記憶だ。
今となってはそれを確かめる手立ては無いのだが。
元の僕は今の僕を見ているのだろうか。
僕の方からは、元の世界は見えないんだ。
ちゃんと顔もあるし、目もあるんだけど、目の形をしているに過ぎない。
耳も口も手も足もみんなそうだ。
あの建物だってそうなんだ。
虚構の産物。
ではなぜ僕に思考があるのかって。
それは僕にもわからない。
恐らく何百年の時間を経ていわゆる魂的なものを持ってしまった、のかもしれない。
意味がわからない。
そんな必要はない。
でもこの街は、とても美しいんだ。色彩が綺麗でね。
ほな!
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