『「パリかベニスかそこいら辺」No.79』

そこは完全に平面の世界だった。

とても色彩が美しかった。

もちろん僕も平面である。

凄く奥行きはあるのに、平面な街の一角にいるよ。

確か元の僕は、確かにその街にいた。

確かなる記憶だ。

今となってはそれを確かめる手立ては無いのだが。

元の僕は今の僕を見ているのだろうか。

僕の方からは、元の世界は見えないんだ。

ちゃんと顔もあるし、目もあるんだけど、目の形をしているに過ぎない。

耳も口も手も足もみんなそうだ。

あの建物だってそうなんだ。

虚構の産物。

ではなぜ僕に思考があるのかって。

それは僕にもわからない。

恐らく何百年の時間を経ていわゆる魂的なものを持ってしまった、のかもしれない。

意味がわからない。

そんな必要はない。

でもこの街は、とても美しいんだ。色彩が綺麗でね。  

    ほな!

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