ワタシはいわゆる”マイナスな人間”だ。
顔立ちは醜く不細工に仕上がっており、体形もお世辞にもスリムとは言えない形体だ。
さらに性格もひねくれてるもんだからモテやしない。
華の女子高生にして絶望である。
校内では陽キャ達が映えだのなんだのと、パシャパシャ写真や動画を撮っている。それを横目に目を閉じる。
『同級生の男子が不意に撮影した動画にたまたま映り込んだワタシが「かわいい」「きれい」とバズり、スカウトの目にとまり、モデルとしてデビュー、女子高生のカリスマに、たくさんの人達に囲まれて、フラッシュを浴びながらカメラを向けられる生活』・・・なんて妄想をしては、現実との差にため息が出る。
そんなワタシに唯一話しかけてくれる子がいた。
そんな優しい彼女も残念ながら”マイナス”だった。
親近感を抱かれたのか、いつしか話すようになった感じだ。
しかし”マイナス”と”マイナス”が一緒に歩いていると、より一層”マイナス”だ。すれ違う人達の目がこちらを見てあざ笑っているのがよくわかる。耐えられなかった。
ある日も帰り道、改札を通りながら彼女につぶやいた。
「ねえ-1+-1は-2 で -1×-1は1 になるの知ってる?」
「そんなの中学で習う事じゃん、何をいまさら。」
そう言って笑う彼女をみて、ワタシも笑った。
ホームまで駆け足で上がっていくと、間もなく電車が来る時間だ。同じく帰宅途中の同級生達やほかのお客さんもそれぞれ並んでいた。
階段から離れた入り口は空いていたので、一番前に並ぶことが出来た。
電車が近づいてくる。ワタシは彼女にもう一度つぶやく。
「”プラス”になりたい・・・。ワタシ達は1つになって初めて”プラス”なの。ああ、あなたが”マイナス”でよかった。」
ワタシはホームに立つ彼女を線路に突き落とした。
自分の体も線路に飛び込んだ。
”マイナス”と”マイナス”が、どちらともわからない状態に混ぜられた彼女たちの肉片は、たくさんの人たちに囲まれ、フラッシュを浴びながら、カメラを向けられていました。
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