仲の良かった中学の同級生3人と20年ぶりにプチ同窓会を開く事になった。場所は、当時4人の溜まり場だった貴久の実家。
俺は仕事で少し遅れて駆けつけた。
「すまん、おそくなった」
「おせーよ、ハゲ」
立派にハゲあがった貴久が自虐的に応えた。笑いがこみ上げる室内。懐かしさに浸りながら室内を見渡す。3人は当時と変わらない席順で当時と同じように円卓を囲んでいた。
「調子はどうよ?」
俺がみんなに訊ねると悠太がこれでもかというドヤ顔で高らかと答えた。
「宝くじで1億円当たって、仕事は弁護士、子供も3人いるぜ!」
続けて、文也が遠慮がちに口を開いた。
「僕は、サラリーマンで子供は1人、株を沢山持ってるから今後は、それに賭けるよ」
文也が君の番だよ、と言わんばかりに貴久の顔を見つめた。
貴久は、バツの悪そうな表情をするだけで何も言わない。
すると、悠太が貴久の顔を指で差し、ニヤニヤとしながら口を開いた。
「こいつ、車の事故で500万の借金を背負った上に事業の失敗で無職になってやがんだよ、負け組街道真っしぐら」
悠太の一言で再び笑いがこみ上げる室内。
貴久は下を向き、泣きそうな顔でうな垂れている。
俺は笑いが止まらず、何度も床に拳を叩きつけた。こんなに笑ったのは何年ぶりだろうか。やっぱり、貴久の負け顔はいつ見ても面白い。
「まだ、負けかどうかはわからないだろうが」
貴久はそう言い放つと円卓の中央に鎮座した人生ゲームのルーレットを力強く回した。
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