『バッティングロボ』

「俺の名前はゼロ」
野球が大好きな父親が「お前は、あの日本人メジャーリーガーを超える存在になれ」ということでつけられた名前だ。
1(イチ)より0(ゼロ)が上だなんて、安易な考え方だけどな。
しかも、俺には誰にも言えない秘密がある。
俺は、この時代に生まれたわけじゃない、化学者でもある父親が発明したタイムマシーンに乗ってやって未来の人間だ。
まあ、今の時代の人間にとっては、こんなに凄い成績を残せる俺は、宇宙人に思われているかもしれないけどな。
「さあ、今日もさっさと試合を終わらせて、ビールといこうじゃないか」
しかし、チームの成績がこれじゃ、監督もコーチもあんな顔になっちまうわな。

「おい、コーチ」
「どうしました?監督」
「あのゼロとかいうロボットはどうなってるんだ?」
「いや~あいつはダメですよ。自分は未来から来た優秀な野球選手だと思わされてるだけで、この成績じゃ・・・誰でも残せそうな成績ですからね~」
「本人は気づかんのか?」
「毎日、修正プログラムが入るんですが、過去の栄光に浸っているようなもんですよ。このままじゃ廃棄処分でしょうな~」

「でしょうな~って・・・まあ、俺もチーム成績がこれじゃ、今年限りかもしれな」
「監督にはまだまだがんばってもらわないと」
「そうだな~まだ1年目だしな。 よしっ、監督直々にちょっと選手にハッパでもかけてくるか」
「わかりました(笑)」

「おい、コーチ」誰だろ?
「オ・オーナーじゃないですか。何してるんですか。こんなとこで」
オーナーは凄くイライラした様子で、私に話かけてきた。
「おい、あの・・・なんとかいうロボットは、どうにかならんのか?
この成績じゃ私もかばいきれんぞ。お前修正プログラムの仕方を教えてもらっとるんだろ?」
「そうなんですが~、一応寝てる間に修正されるようにプログラムされてますし、あーやって練習だって、きちんと・・・」

「いや、監督のほうだよ。」

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