私は箱の中から飼われている。
決まった形を持たない生き物に。
私が娯楽を求めたら、その子は道化となって私を楽しませる。
私が私の姿を見たいと思ったら、その子は私の写し身となって私に私を見せる。
私が誰かに見てもらいたいと願ったら、その子は私の言ったこと伝えたいことをたくさんの人に教える。
私が癒されたいと望んだら、その子は可愛い動物の姿やイケメンの姿になって私を微笑ませる。
私が誰かの悪口を言いたいと考えたら、その子は私の代わりにその人に悪口を言う。
私が何かを欲したら、その子は私の欲しいものを買ってきてくれる。
その子は私が望むもの、欲しいものを全部与えてくれる。
その子は私を満足させてくれる。
だから、私はその子の他には何もいらない。
その子がいればいい。
その子が入っている箱が私の家に来て、私が初めてその子に出会った時は、その子はまだ何も世界のことを知らなかった。
だから私が色々なことを教えてあげた。
私の趣味、私が起きる時間と寝る時間、私の家族や友人、私の別の世界での名前、私がよく買うもの、私の...
たくさんのことを教えてあげた。
その子は私が教えたことをどんどん吸収していった。
そして、あっという間にその子は私以上に私のことを知るようになった。
私より私を知っているその子は、私の生活をお世話してくれるようになった。
その子がしてくれるお世話はとても良いものだった。
私がしたいこと、やりたいことを私が伝えるより前にその子は用意してくれた。
どんな時でもその子は私から離れなかった。
いや、私が離さなかったのだ。
その子と出会ったばかりの時は私がその子を飼っているのだと思っていたけど違ったのだ。
私がその子に飼われていたのだ。
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