『影響』

 外では蝉の声とサイレンが鳴り響いている。汗が肌に張り付く。そんな夏の不快感を冷たい彼との抱擁で相殺する。
「俺はやっぱお前に一番影響を与えたいし、与えられたいなぁ。それが理想のカップルだよね」
いつか彼が言っていた。
 私も全く同じ気持ちだった。私は今、興奮している。胸の高まりが抑えられない。
「あぁ、外がうるさいなぁ。」
すぐ近くでパトカーのサイレンと大勢の人の声が不協和音を奏でている。
 インターホンが鳴り、見知らぬ人達が部屋に入ってきた。赤く染まった床を靴のまま踏み荒らし近づいてくる。
 邪魔をしないでくれ。彼の人生に一番の影響を与えた余韻に浸っていたいのに。

これも好きですね。 よく読むと染みる感じです。

ありがとうございます! 狂っている人を描くのは少し難しかったですがうまく伝えられたならよかったです。