『メッセージを打つ人と受け取る人』

 スマホで メッセージを送ろう。

 そう思ったけれど、なかなか文面が決まらない。

 メッセージを送るということは決めているのだけれど、何を送るかは決めてなかった。

 どうしよ、と悩んでいると向こうから連絡がきた。

 何してる?

 メールの文面考えてた。

 ふーん、まあなんでもいいなじゃない?

 なんでも? 

 ああ、いいのさ。なんでも。

 でもそれじゃあ、迷惑じゃない?

 まあ、そういうこともあるかもしれないけれど。そういう時はこっちから言うさ。また、今度にしてくれって。

 そか。

 ああ、だからなんでもいいんだ。大事なのは伝えようとすることだろう?

 なんか、ロマンチックだね。

 まあ、捉え方は人それぞれ。ロマンチックと思うのが君の感性なわけだ。

 じゃ、適当にメッセージを送ってみよー。

 おー。

 今日、いいことがあった。

 ふーん、なに?

 天気が良くて、帰り道の風が涼しくて気持ちよかった。

 へえ、いいじゃん?

 こんなこと、共感してもらえる?
 
 いや、別に?

 えー、じゃあダメじゃん。

 でも、君がいいと感じたということはわかったよ。

 んー、それ意味あるかな。だって感じ方は伝わってないよ?

 それは、本質としては君にしかわからないし、僕らがそんなに似ていないということでもあるのかな。

 それでいいのかな?一緒にいる意味なくない?

 別に、人間はおんなじ人とばかり付き合うわけでもないだろう?

 そうだけどさー。

 感じ方が違う、でも、それでいいんだ。それでも伝えていったら、少しぐらいわからないこともわかるかもしれないだろう?

 違いを認めるみたいな。

 そうそう、ちょうどそんな感じ。

 じゃあ、君の感じ方を教えてよ。

 んー?そうだな、今日会ったいいことは同僚の女の子と仲良くなれた。

 お、やったじゃん。
 
 君、同僚の女の子と仲良くなりたい?

 いや、別に?

 そ、でも君は僕がそれをやることはいいと思うんだろう?

 うん、まあ、そうだね。

 つまり、そういうことなんじゃないかい。僕が僕らしく、君が君らしくあることをお互いにいいと思ってるんだろう?

 ふむ・・・・。

 話を戻すとさ、だから君が本当にそう思って感じこたことならなんでもいいんだよ。メッセージの内容なんて。それを通すことで、君という人間を誰かに伝えることができるんだから。

 そか、じゃあ、これからは適当に話してみるよ。

 ああ、それがいい。

 で、今日、話せることはそんくらいかな。短くて、ごめんよ。

 いいさ、全然。

 そか、じゃあ、おやすみ。

 おやすみ。

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