『夢』

 これは僕がまだうんと小さい頃の思い出だ。
 幼い頃は何時に寝た。みんながどうかは分からないけど僕は当時9時には就寝していたんだ。
 僕は当時こんなことを思っていた。次の日はどうやってやってくるの?とね。だから色々な想像をしてみたんだ。例えば鳥が次の日の空を運んでくる、とかね。
 今となっては当たり前の話だけど当時の僕はただただそれが不思議だったんだ。
 だから頑張って夜更かしをしようとしたんだけど、寝落ちしちゃったり、両親に怒られたりして全然うまくいかなかったんだ。
 でもそんなある日、何故か僕は早朝に目を覚ましたんだ。
 両親はまだ寝てるけど、目が覚めちゃったし、なんかしようと思って試しにカーテンを開けてみたんだ。
 そしたら夜の海よりも濃い藍色と夕暮れの橙色が混ざったような不思議な色の空が僕を覗いていたんだ。
 時が経つにつれて空は橙色から水色に変わっていく。そしてとうとう普段僕が目にする絵の具で染めたような水色の空になったんだよ。
 僕はそれがわかった時まだ言葉をそこまで知ってたわけじゃなかったから言葉にできなかった。
 けど今ならわかる。あの時僕は世界の真理の一つを発見したんだ、って思ったんだろうね。世界にはたくさんの歯車があってそれが常に寸分の狂いなく回っているのだと。そして地球は常にその歯車を調律しているのだと。それはなんと素晴らしく、美しいのだと。
 ああ、きっとあの時僕はこんなふうに思ってたんだろうな。

この短編小説にはまだコメントがありません。
ぜひ一番最初のコメントを残しましょう。