『夜に歩く』

 歩いていた。
 
 どこに?よくわからない。

 ただ歩いていた。暗闇の中を黙々と。

 意味なんてあるのかな?

 そう問う声があった。

 至極まっとうだ。

 だから足を動かした。

 足が止まろうとした。だから足を動かした。

 今日は調子が悪かった。だから足を動かした。

 遅くなってもいい。短くなってもいい。

 ただ歩けばいい。

 どこに着くのかは問題だろう。なにせ理想がある。

 でも、あまり大きな問題じゃない。それは当座の目標で、本当にそこに着くのかもわからない。

 それより先に行くかもしれない。それより手前で道は終わるのかもしれない。

 わからない。でも歩く。だから歩く

 時間は短くてもいい。ただ、気づいたときに歩く。そういう歩き方をする。

 歩くことそのものが楽しいのだということを思い出す。

 楽しいように工夫して歩く。

 そうやって歩いていく。

 次はどこに着くだろうか、わからない。でも歩く。

 歩く。きっとそれが楽しいから。僕が僕らしく歩くそれが一番、楽しいから。

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