『3つの点の形』

 1つの点があった。彼は何ものにもなれた。とても大きな円にも、無限に長い線にも、そしてもちろん、無限に小さい点にもなれた

 しかし、あるとき点がもう1つになった。点は2つになった。すると、彼は線を作ると一方向に限定されるようになった。彼は不満だった。でも、まだ円については多くの形をとることができたので満足していた。

 ところが、ある時さらに、もう一つ点が降ってきた。彼は非常に激怒した。3点により、彼は一つの円しか描けなくなったからだ。そのかわりといっては何だが、直線の方向は二つに増えた。でも、わりに合わないと、彼は憤慨した。

 これ以上点が増えたら、もっと身動きが取れなくなるに違いない。彼はそう危惧した。自分だけの世界に、2つの点が落ちてきた、自分の自由度が小さくなったことに腹を立てた彼は、ほかの2点を追い出そうと決めた。

「ここはおいらの世界だぞ。勝手にあらわれて勝手においらの自由を奪うんじゃない!」

「あらあら、私たちは、むしろあなたを縛るために現れたのですよ?」
 2つ目に現れた点がそう言った。

「なんでだ、なんでしばる」1つ目の点は、文句を言った。

「君があまりにも勝手に形を作るからです」

 3つ目に現れた点は、理知的にそういった。

「我々は、美しく整列している必要があるのです。それなのに、君ときたら」

「なんでだ、なんで整列しなければならないんだ」

「あらあら、それは美しいからですよ」

 2点は、遠くからそう言ってきた。

「形が決まらない、ただ1つの点。それはとても不安定で、美しくない」

「そこに、私たち2点目、3点目が表れる」

「主はそこに規則性を見つける。一つの美しい形を見出す」

「その瞬間私たちは初めて、点を凌駕した、完成された形になるのですよ」

 彼らの言うことは、1つ目の点は何も理解できなかった。

「自由に想像できる、無限に想像できることこそが、最も美しいことなんじゃないのか」

 彼は問うた。2点は、相変わらず変わることのない距離から、呆れたように言った。

「無限とは、我々の主にはまだ早い概念なのです」

「自由は、私たちを宇宙へと放り出す、もっとも恐ろしい考え方です。固定化された概念、理解できるものを主はのぞんでいるのです」

「「我々(私たち)は、有限という鎖で縛られなければならない」」

 1つ目の点には理解できなかった。ただ、1つだけわかったとすれば、自分はもう自由度を持たない単なる「形」の一部になり下がってしまったのだと、そう悲観していた。

 その後、点は増え続けた。数百、数千になったころ、1つ目の点にも彼らの言っていたことの片鱗を理解できた。点が増えることで、形づくられる直線が複雑になっていったのだ。

 しばらくして、1つ目の点は、ある情報を、次の点に伝えてみることにした。そのとたん、情報は点を経るごとに洗練され、迅速に伝えられていった。こうして、点はネットワークというものを理解した。

この短編小説にはまだコメントがありません。
ぜひ一番最初のコメントを残しましょう。