『自殺用品店』

「何が欲しい?」
「ナイフ」
「あっそ」
投げられたナイフ。床に突き刺さる。
拾う。
喉を突いて
死ぬ。

「何が欲しい?」
「ロープ」
「あっそ」
渡されたロープ。
首に巻いて
自力で、
死ぬ。

 今日も、客は来る。皆、頭の上に疑問符をつけている。死んだとて、そのひん曲がりの曲線が伸びることはないだろう。
 それでも私は仕事をする。それは仕事をするために。
 おかしいかい? でも、生きることだってそんなもんじゃないのかい?

「何が欲しい?」
「…死ぬ勇気」
「あっそ」
与えた勇気
喉に手を伸ばして、

しかし
腕を降ろして、
「…ありがとう」
店を出る。

 死ぬ勇気が湧けば、生きることも怖くなくなるのさ。生と死の狭間なんて、それは虹のように曖昧なのさ。
 ほら、分かったら、とっとといきな。

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