『おじいさんの独り言』

 僕は風鈴です。
 築40年の一軒家に住んでいます。
 家族は僕をここへ連れてくれたおじいさん。若いころ、おばあさんの誕生日プレゼントになりました。そのおばあさんは去年、癌で亡くなりました。
 男の中の男の性格なので、涙は流しませんでしたが、きっと心では泣きたいでしょう。
 そんなふたりには子どもが3人います。みんな自立してます。長期の休みには必ず里帰りします。
 今日は夏休みの話をします。
 
 ある夜のこと、長男の博くんの家族が遊びに来ていました。深夜だったので、寝静まっていました。
 その頃のおじいさんは、トイレが近いのとご年齢で体力がありませんので、起きていました。
 いつもそばにある茶の間の窓を開けて、1人で夜空を見ていました。
 すると、おじいさんは涙を流していました。
 その現場を見た僕は疑問に思いました。
 星はなにもいじわるをしていないでしょ、と――。
 考え込む僕のとなりで、おじいさんは言いました。
「正子、元気にしてるか? この世はどうだ? いずれ、そっちへ行くからな」
『正子』は亡くなったおばあさんの名前です。
 そう言って、窓やカーテンを閉めて、私室に戻りました。
 この時、目に涙が潤んでました。

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