普段は見ることのない火の大きさに、友達はただ呆然としていた。部屋のあちこちが燃えていて、今にも友達を飲み込もうとする勢いだった。そして突然目を見開き、またおっとりとして友達が何か呟いて、視界が断たれた。
少年は空を見ていた。授業終わりの教室で今朝の夢を思い出していた。不思議とよく覚えている。でもあの時友達は何と言ったか、そこだけが思い出せない。
記憶をたどっていると、本人が声をかけてきた。
「外行こうぜ」
少年は誘いに乗って、教室を後にする。そんな彼らを先生は複雑な表情で見ていた。
彼らに関わろうとする生徒はいない。同じ時期に転校してきた彼らはとてもよく似ていた。容姿から性格、運動能力においても気持ち悪い程酷似している。家族はもちろん、育ってきた経緯すら全く違うという背景から考えても、先生たちの間でも不穏な空気が流れている。二人の影が教室から去ったと同時に、先生はプリント作成に取り掛かった。
学校が終わり、少年は友達と家に帰る。ただそれだけで周りの大人たちから変な視線を浴びる。どうも彼らが瓜二つのように見えるらしいが、少年は同意できなかった。性格だけでとっても、友達はユーモアが溢れている。具体的にと言われても難しいがとにかくそう感じる、と少年は思う。
しばらく歩くと、前から二人の不良が近づいてきて、二人を見た途端、顔が青ざめていっった。そして走って逃げていった。
ここまで反応があるのはめずらしいが、やはりいい気分はしない。
少年は家に帰り、テレビを見ていた。今日の最高気温は35度と表示されている。改めて知らされたせいか、体がぐったりとしてきて、リビングで横になった。
目がさめると、そこはもう火の海だった。状況がわからず、少年は立ち尽くした。あちこちで火があがっている。どうにか逃げようと思い至ったその時、頭がぐらつく。そして少年は納得したかのように顔に余裕を見せて言った。
「じゃあ、またよろしく」
少年は空を見ていた。授業終わりの教室で今朝の夢を思い出していた。不思議とよく覚えている。でもあの時友達は何と言ったか、そこだけが思い出せない。
記憶をたどっていると、本人が声をかけてきた。
「外行こうぜ」
少年は誘いに乗って、教室を後にする。
そんな風景が映し出された画面を、博士は愛おしそうに見ていた。そして振り返ると、憎たらしいような目つきで睨んだ。その視線の先には、少年たちが先日会った二人の不良が縄で縛られ、怯えた様子でいた。
「オリジナルを始末するはずが、一度ならず二度までもわしの作品を燃やしおって。役立たずはいらん」
そういうと、博士は拳銃を取り出し、不良達を撃った。
助手の人が少年だったものをいじりながら言った。
「次は私が行きましょうか」
「ああ。最初から君に任せればよかった。いいか、オリジナルの家を燃やすんだ」
「もちろん承知してます」そう言って少年だったものを次々と分解していく。
博士は再度画面を眺め、言った。
「もうすぐだ。もう少しで世界は成りかわる」
そう言って、機械のような声で高笑いした。
分解を終えた助手の人が部屋を出る。そして、
「それはもうやりました」
と言って、薄く微笑んだ。
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