『サイテーな世界』

「このサイテーな国にさよなら」
男はそう言って、首を吊った。
こうなる少し前、男は一国の総理大臣だった。容姿端麗、有言実行、常に国民のことを考えている最高の総理大臣だった。
この男が総理大臣になるまでこの国は犯罪は絶えず、多くの人々は貧困に苦しみ、劣悪な国だった。だが男は自分の力でここまで国を変えられるのかと疑問に思った。
男は真実を知ってしまった。歴代の総理大臣は地下牢に閉じ込められていたのだ。この国は、いつの間にか国民に支配されていたのだ。それほどまでに劣悪な国へと変わったこと知った男は縄を用意して覚悟を決めた。
彼の選挙のスローガンは「このサイテーな国にさよなら」だった。

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