地面が近い、目は開いている。
しかし見えているのは目の前では無い。
全く違うモノが見えている。
一瞬の出来事だ。
ブランコに乗っている、どこにでもあるやつだ。
向こうの方のベンチでは、どこかのお母さんが、ベビーカーに乗った赤ちゃんと喋っている。
大きな木の側ではおじいさんが犬と散歩している。
合格発表を見て同級生と喜び合っている。
川で石投げをして何度弾むか競い合う。
ネクタイを締めてリクルート。
バレンタインにチョコレートを貰う。
チャペルのバージョンロードで、義父から花嫁を託される。
息子の出産に立ち会う。
入園式、卒園式、入学式、卒業式、反抗期
息子と初飲み、彼女を紹介される。結婚式後に広く感じる我が家。
散歩。
地面が近い。
周りに人が集まってきた。恐らく自分はもう最期なのだろう。
救急車のサイレンが近くなる。
隊員たちが来た、声が聞こえる。
「皆さん離れて下さい。
ロボットを回収します。
ショートして火が上がる可能性もあるので離れて下さい」
何を言ってるんだ。
ロボット…
ほな!
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