『「三秒前」No.3』

地面が近い、目は開いている。

しかし見えているのは目の前では無い。

全く違うモノが見えている。

一瞬の出来事だ。

ブランコに乗っている、どこにでもあるやつだ。

向こうの方のベンチでは、どこかのお母さんが、ベビーカーに乗った赤ちゃんと喋っている。

大きな木の側ではおじいさんが犬と散歩している。

合格発表を見て同級生と喜び合っている。

川で石投げをして何度弾むか競い合う。

ネクタイを締めてリクルート。

バレンタインにチョコレートを貰う。

チャペルのバージョンロードで、義父から花嫁を託される。

息子の出産に立ち会う。

入園式、卒園式、入学式、卒業式、反抗期
息子と初飲み、彼女を紹介される。結婚式後に広く感じる我が家。

散歩。

地面が近い。

周りに人が集まってきた。恐らく自分はもう最期なのだろう。

救急車のサイレンが近くなる。

隊員たちが来た、声が聞こえる。

「皆さん離れて下さい。
 ロボットを回収します。
 ショートして火が上がる可能性もあるので離れて下さい」

何を言ってるんだ。

ロボット…

                ほな!

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