老人は言う。
「さぁ早くわしを食べなさい」
私は言う。
「そんなグロテスクな事はできない」
老人は。
「そんな事をいっている場合ではない」
私は。
「言っている意味がわかりません」
尚も老人は。
「解らなくてよろしい。しかし早くわしを食べなさい」
そう言って上半身裸で胸を突き出してくる。
カサカサでシミだらけでブヨブヨとたるんでいる。
「とにかく私は無理です。それに嫌です」
すると老人は落胆した。
大きく「ハァー」と溜め息をついた。
老人はゆっくりと喋り出した。
「わしはなお前に食ってもらわんと終われんのじゃ。
ここには二人はおれん。
お前が来てくれたから、やっと終われるのじゃ。
さぁ早くわしを食うてくれ。もうこんな処にいるのは勘弁じゃ」
何のことだかサッパリ把握できない。
「おじいさんもし僕があなたを食べなかったら、どうなるのでしょうか」
「お前さんがわしを食うてくれなんだら、わしは諦めてお前を食うだけじゃ。
そしてまた長い間、ここでこうして一人ぼっちで過ごさにゃならん。
もう止めにしたいのじゃ」
私は混乱した。
落ち着こう。
ここに存在出来るのは一人だけ。
二人になるとどちらかがどちらかを食べないといけない。
そして食べた方がまたここで一人だけで過ごす。
で老人はこの生活をやめたいと思っている。
だから食べて欲しいと。
選択肢は2つだけ、どちらも選びたくない。
困った、目をつむって考えていた。
どれくらい考えただろうか。
気が付いたら、老人にパクッと食べられてしまいました。
ほな!
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