『「友情」No.17』

「ねぇねぇ皆んなこれ凄くない?」

「どこが?」

「だってこれ今までずっと違法だったんだよ」

「うん、それは知ってるよ。だからそれがなんだっていうの」

「でしょぉ、違法だったんだよぉ、それがさぁ、合法になったんだよぉ、これを凄いと呼ばずして、どれを凄いというのかねぇ」

「なんかえらく興奮してない?こんなのって世の流れでしょ」

「世の流れ?」

「そぅ、世の流れだよ。
 世の流れは誰にも止められないんだ」

「そっちこそ何言ってんの?
 なんだかその意見もっともらしく聞こえるけど、ちっともじゃん」

「なんだよ、ちっともって。そっちだって、
 違法が合法になっただけで別に自分が貢献した訳でも無いのに、さぞ関係者然としてる」

「そんな事ないわよ。
 凄くない?って言っただけじゃない。
 本当に凄いと思ったから、その思いを共有できると思って、言っただけじゃない。
 それをサラァッと世の流れだよ、で済ますんだから。コメンテーターか」

「だって、世の流れだと思ったから世の流れって言っただけ、
 自分に都合の良い返事と違ったら攻撃してくるの、やめてほしいわ」

「なによ、あなたなんてムニィよ」

「あっ、わっ。ムニィ止めてよ。そんなのするなら、こっちだってムニムニィよ」

「あぁ真似した。真似しないでのね」

「真似じゃないわよ。やられたから同じ事やり返しただけじゃない」

「ムニィは私の技よ。取らないでほしいわ」

「あんたバカじゃない?ムニィは誰でも使える。
 皆んなのムニィよ。なんなのよ独占するわけ?」

「そうよ、独占よ。
 決めた、独占する」

その後もこの「ムニー事件」は拡大し、国家権力も乗り出す所までに。

そしてとうとうムニィは法律で禁止になった。

「世の流れだよ」

「あっ、それ元々わたしの言い回しじゃない。
 止めてよね」

「いいじゃない、別に」

「良くはないわよ、あなたは何でも凄い凄いって言ってればいいのよ」

      ほな!

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