『「最愛」No.20』

転校生が来た。

転校生は転校生してきた日だけ学校に来た。

転校生は二日目から来なくなった。

家が近かった私は、大切なお知らせのプリントなんかを転校生に持って行った。

転校生はカラダが弱いらしい。

私は至って健康なので、気の毒に思った。

彼はカラダを悪くしたので、私たちの住む田舎街に引っ越して来たのだという。

空気が良いので恐らく来週から学校に行けると。

それは良かったね。

次の週、二度目の登校。

気恥ずかしいだろうから、一緒に登校した。

彼の柔らかい人柄に皆惹かれた。

三日もすればみんなお友達になった。

一週間を過ぎれば人気者になった。

もう私が心配しなくても大丈夫。

病気の具合もいいみたいだし。

登下校はまだ何となく一緒だった。

彼が柔らかい人柄だったので、私たちの事を茶化したり冷やかしたりするクラスメートはいない。

私は帰り道で急に胸が痛くなった。

次の日、学校を休んだ。

病院に検査に行った。

数日したら結果が出る。

学校に行きたい、彼に会いたい。

数日後、結果が出た。

精密検査が必要になり、都会の大きな病院に検査入院した。

怖い、彼に会いたい。

検査の結果が出た。

しばらくこの都会の大きな病院に入院になった。

毎日沢山のお薬を飲んだ。

毎日二回の点滴も打った。

日に日に食欲が無くなるのが分かる。

日曜日、彼がお見舞いに来てくれた。

彼が柔らかい手で私の手を握ってくれた。

小刻みに震えていた。

もしかして私は死ぬの?

彼は言った。

そうじゃないよ、好きなあなたの手を握って嬉しくて緊張して震えただけだと。

私は分かった。恐らく死ぬ。

だから彼に言った。

もう少し大きい病院に移らないといけなくなったから会えないの。

遠いの。

凄く、遠いの。

会えなくなるね、心配しないでね。

ちゃんと治して学校戻るから彼は柔らかい表情で帰って行った。

私は病院は移らない。

彼と会うのが辛い。

会わない方が辛い。

どちらか考えたら会うのが辛いと思った。

だから嘘を付いた。

二人はもう二度と会う事は無かった。

                ほな!

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