『「あそこ」No.34』

うねった道を真っ直ぐに歩く。

ボロボロの電信柱とピカピカのゴミ箱。

グレーの空には太陽は無い。

その代わりに白い結晶が下りてくる。

同じ家ばかり続く。

ボロボロの電信柱はよく見ると、13本に1本の割合で綺麗なのがある。

ピカピカのゴミ箱はよく見ると、86箱に7箱の割合でフタのないのがある。

ボロボロの電信柱はよく喋る。

たわいも無い事をとにかく喋る。

サーフボード抱えたジャージの話や、1850年生まれの片方だけの革靴の話が好きで、1日に5度は話す。

ルマンチャスとペグリーヌの話は年に1回しか話さない。

それらの理由は全くもって知らない。

恐らくボロボロの電信柱にも解らないであろう。

ピカピカのゴミ箱はダンスについて考えるのが大好きだ。

毎日毎日ダンスについて考えている。

しかし全然答えは見つからない。

ルスーワット島のチャパル族のダンスや、ゾールセナヌン国のザクディム地方のダンスなんかの事を、考えるのが特に好きだ。

考えているとうっとりする。

考える理由なんてどうでもいい。

考えている事が幸せなんだ。

いくらか時間が経ったようだ。

折り返し地点らしい。

地面を見た。

白い結晶が空に戻り始めている。

                ほな!

この短編小説にはまだコメントがありません。
ぜひ一番最初のコメントを残しましょう。