『「犯人に告ぐ」No.37』

「手を上げろ」 

まさか自分がこういう場面に遭遇するとは、思ってもみなかった。

「早く手を上げろってんだろ」

然し乍らどうしてこんな所に、来てしまったんだろうか。

「いいから、早く手を上げろって言ってるんだよ」

嗚呼っ、畜生。こんな事なら遠出しなきゃよかったよ。

「人の話を聞いているのか?手を、手を上げろ」

でも、なんでこんな所に来ようと思ったんだっけ。

「おい、頼むから俺の話を聞け。じゃないとお前の頭に玉を打ち込まなきゃならなくなる」

はて、本当にどうしてなんだろ。困ったな。なんだか記憶が飛んでるかも。

「もしもーし聞いて下さぁーい。俺は銃を持っています。そしてその銃口をお前に向けています。で、手を上げろと言っています。わかりますかぁ?」

どうして記憶が飛んじゃってるんだろ。

老化なのか、それかもしかして病気なのかもしれないぞ。

「おーい、おーい、もしもーし手を上げて下さーい」

病気だったら嫌だな。どうしよう。

もうあれだな、心配していても仕方がない。

病院に行こう。

       ほな!

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