「手を上げろ」
まさか自分がこういう場面に遭遇するとは、思ってもみなかった。
「早く手を上げろってんだろ」
然し乍らどうしてこんな所に、来てしまったんだろうか。
「いいから、早く手を上げろって言ってるんだよ」
嗚呼っ、畜生。こんな事なら遠出しなきゃよかったよ。
「人の話を聞いているのか?手を、手を上げろ」
でも、なんでこんな所に来ようと思ったんだっけ。
「おい、頼むから俺の話を聞け。じゃないとお前の頭に玉を打ち込まなきゃならなくなる」
はて、本当にどうしてなんだろ。困ったな。なんだか記憶が飛んでるかも。
「もしもーし聞いて下さぁーい。俺は銃を持っています。そしてその銃口をお前に向けています。で、手を上げろと言っています。わかりますかぁ?」
どうして記憶が飛んじゃってるんだろ。
老化なのか、それかもしかして病気なのかもしれないぞ。
「おーい、おーい、もしもーし手を上げて下さーい」
病気だったら嫌だな。どうしよう。
もうあれだな、心配していても仕方がない。
病院に行こう。
ほな!
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