『「新聞」No.49』

「山田ぁ~ちょっとこっちきてみろよ。凄いもの見つけたぜ」

「なんだよ、佐藤。何を見つけたっていうんだ」

「昨日の毎日新聞」

「なんだよ佐藤。そんなもんらここにある訳ないだろう」

「でもほら、あるじゃないかここに」

「あっ、本当だ。で何書いてあんの?」

「うう~ん、なんだ知らない総理大臣と知らない国の大統領が笑いながら握手してるぜ」

「総理大臣なんているわけないだろう。それに知らない国の大統領なんてのもいないよ。
他には何が載ってるの」

「そうだな、玉突き事故の記事と、連続通り魔事件の記事と、国民的人気芸人の早過ぎた死っていう記事もあるぜ」

「どれも無いな。
だいたいなんだその新聞ってのは」

「知らないよ。
だって毎日新聞って書いてあるもん、ほらここに」

「そうだな書いてあるな。
じゃそうなんだ。
でもまいったなぁ、そんなもん別にいらないんだけどなぁ」

実は二人は二人居ません。

実は一人です。

何を言っているのだ、とお感じでしょう。

それはそうですね、仕方が無い。

一人の二人は、第三次世界大戦と地殻変動が同時に起こり全ての生き物は死に絶え、大陸という大陸がほぼ全部海に沈み、半径五百メートルほどの小さな島が数カ所点在するのみとなった。

食べられる物は全て食べ尽くして、無くなり彼は衰弱して息を引き取る瞬間の夢うつつの状態で見た蜃気楼のような話だから。

          ほな!

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