『「野望」No.51』

たいへん徳の高いという部分もそうであるが、テレビなどでよくお見かけするので、世間一般に有名であるお坊さんの話だ。

本をバンバン出しまくっている。

テレビにもバンバン出まくっている。

説法と言う名の講演もバンバンやっている。

しまいにはディナーショーや俳優活動、写真集発売やワイドショーのコメンテーター。

一応お寺の住職である。

しかしほぼいらっしゃらない。

とにかく徳の高いと世間一般に有名だから、仕方がない。

そういう具合に世間様によく知られるようになって数年経つと、下世話な週刊誌に黒いうわさを煽られる。

彼は一切それについては肯定も否定もしない。

もちろん意見もしない。

ニコニコしている。

彼の元には沢山のメールや手紙による悩みの相談や、ファンからのメッセージが届く。

彼はできるだけ全ての人に迅速に返事を書いている。

彼は今や仏教というものを超越した、全くもって別の宗教の教祖様のような存在だ。

彼はついに政界へもデビューし、あっという間に日本の執行責任者になった。

それと共に初代大統領となった。

大統領となった彼のとった政策は、日本という国を1つのベンチャー企業にしてしまった。

国であり(株)日本である。

国民は全て従業員である。

雇用の仕方はアルバイトから正社員まで色々である。

(株)日本とは何をする会社なのか。

それを知っている日本人は誰もいない。

お客様は世界である。

そのお陰で国から給料は頂ける。

税金は撤廃。

国民はそれ以外にも元々の自分の仕事は行ってよろしい。

他の国でも(株)国名が流行ってきた。

いわゆる関連企業が沢山出てきた訳である。

彼はそのCEOも務める。

一応住職なのだが、お寺にはほぼいらっしゃらない。

ある時、昔の同盟国であったアメリカが、攻撃してきた。

気にくわないのであろう。

彼はそれに対してとくに何もしなかった。

無視したのだ。

怒ったアメリカは出せるだけの軍艦や戦車、戦闘機、ミサイル、兵隊を日本に送り込んだ。

サイバー攻撃も行った。

それに対して(株)日本は何も対処しなかった。

無視し続けた。

その結果、日本の国民は十分の一になった。

しかしそれがきっかけで、彼の存在が更に大きくなり(株)日本の株価は一気に上昇し世界一の企業となった。

瞬く間に彼は(株)世界の筆頭責任者へと相成った。

一応住職、お寺にはほぼいらっしゃらない。

そういう映画を製作したいと、家の近所のボロボロの寺の住職である同級生は野望を語った。

クソがつくくらいに汚い居酒屋で。

最終的には酔いつぶれたのでタクシーで送ってやった。

彼は住職である、ちゃんと毎日お寺に居ます。

         ほな!

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