「なぁ金貸してくれへんか」
「嫌や」
「なんでやねん」
「だってお前に貸したら、ちゃんと返してくれるやん」
「それ普通やん」
「だから嫌やねん」
「お金を借りたければ俺の言うことを一つ聞いてほしい。
それをやってくれるならお金は貸してもええよ」
「なんやそれ。
難しいやっちゃな。
なんやようわからんけど、まぁ言うてみなはれ」
「お金は貸してやる。
せやけどわしは今お金を持っていない」
「それやったらそうと早よ言いなはれや」
「まぁ待て、最後まで聞けや」
「ほぅ」
「でな、お金は貸してやるからそのお金は二度と返してくれるな」
「そんなアホな。
それはお金を借りるじゃなくて、もらうやろ。
そらアカンわ」
「最後まで聞けって言うたやろが」
「はいはい」
「でな、その貸す金額もこっちが無作為に決める。
もちろんお前が借りたい金額よりは多い」
「ふん」
「めちゃくちゃええやろ。
借りたのに返さんでよくて、金額も充分な程ある」
「あのさぁ」
「うるさい口を挟むな」
「いやでも」
「なんや」
「だってお金持ってないんでしょ」
「せや」
「こんな話してても仕方がないやん」
「なんで」
「なんでって誰が聞いてもそう言うわ」
「そうかぁ」
「そうに決まってるよ。
だってお金ないんだから無いんだよ。
無いのにお金は返さなくても良い、金額は多めに渡す。
アホやん」
「今は無いけど、すぐに用意するがな」
「えっ用意できんの」
「ああ、用意でけるよ。
今、手元に無いだけや」
「なんやそうなんや」
「おぅ、ちょっと待っとりや」
「ああ、ええよ」
数分後。
彼の手元には確かにお金が。
そしてそのお金はもう一人の彼の元へ。
「こんなにもうてええんか」
「おぅ」
「ほんで返さんでもええんか」
「おぅ」
「ほんまにか」
「おぅ」
「ほんまに、ほんまにか」
「おぅ」
「でも俺こんなに要らんねんけど」
「おぅ」
「でな、できたら返したいねんけど」
「おぅ」
「なぁって」
「しつこいやっちゃな。
返さんでもええっちゅてるやろ。
ほならな言うたろ。
そのお金な君んとこのオカンに事情言うて、拝借したお金やさかいにわてに返す事はいらん」
ほな!
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