『「宇宙船」No.69』

間も無く当機は地球の大気圏に突入致します。

若干の揺れがございます。

皆様、御着席の上シートベルトを締めて下さい。

柔らかい声のアナウンスが流れた。

半年間の火星出張からやっと解放され懐かしい我が家に帰れる。

赤いランプが点灯した。

いよいよだ。おや⁉︎揺れない。

パイロットが良いのか、とてもスムーズに大気圏を過ぎた。

地表が前方スクリーンに映し出された。

嗚呼懐かしの地球。

帰ったらゴロゴロするぞぉ。

家族のお土産もちゃんと買ったし、これから一カ月の休暇が待っている。

温泉旅行でも行くか。

柔らかい声のアナウンスが流れた。

皆様エアー日の本ご利用ありがとうございます。

投機は予定通り東京インターナショナルステーションに到着予定です。

しかし誠に不可解な事態が発生致しました。

ステーションとの通信が途絶えました。

原因を究明中ですので今しばらくお待ちください。

なんだよ、この不安をあおるアナウンスは。

またアナウンスが。

お客様にお伝えします。

当機はなんらかの原因で、ワームホールに吸い込まれてしまったようです。

確実に日本に向かっているのですが、遥か昔の日本になってしまっております。

前方スクリーンを見た。

ビルが無い。

海上にあるステーションも無い。

なんてこった、あっ危ない黒船だ。

       ほな!

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