『「ナノ法師」No.75』

おいらの名前はナノボーイ。

小さ過ぎて誰にも見えないぜ。

だからおいらがいても気付かれないぜ。

しかし、おいらも小さ過ぎて人間が見えにくいぜ。

誰も見つけてくれないから勝手に育ったぜ。

都へ出て仕事を探したぜ。

もちろん、小さ過ぎて誰にも気付かれなかったぜ。

だから無職さ。

二匹の鬼が暴れていたぜ。

こらしめてやろう。

やっぱり、気付かれなかったぜ。

だから、飲み込まれなかったぜ。

鬼はひとしきり暴れた後、美人な女性をさらっていったぜ。

こりゃ大変だ。後を追ったが小さ過ぎてどんどん離されたぜ。

必死に追いかけること十五年、とうとう鬼の家を見つけたぜ。

中からは笑い声が。

鬼家族が幸せそうに暮らしてたぜ。

あの女性はすっかりいいお母さんになっていたぜ。

仕方がないので庭の隅っこに勝手に住むことにしたぜ。

なんせ誰にも気付かれないからな。

しかしよぉ、おじいさんもおばあさんも神様にお願いするんだったら、もっと真っ当にお願いしてもらいたいもんだぜ。

      ほな!

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