新着のショートショート一覧

  • 光の川aguri
    東京の満員電車は現代における一種の拷問器具だ。 詰められ、押し潰され、圧縮される。 私は満員電車が嫌いだ。 初めて東京の満員電車に乗った事は今も忘れない。 田舎の山口から上京した次の... 続きを読む
  • 厭な事があると、私はこの海に来る。 自宅から徒歩三十分。 何の特徴も無い、ただの汚い海だ。 塵は浮いているし、水は濁った鈍色だ。 でも、私の脚は決まって此処に向く。 来るのは決... 続きを読む
  • 「ようこそ、諸君」  ほの暗く、頼りない灯りたちが照らす中、重々しい男性の声が、静かに響き渡った。この声は俺たちを統括している、責任者のものらしい。直接会ったことはない。  俺は集められ... 続きを読む
  •  肌寒さを感じて、はっと目が覚めた。  どうやら、うたた寝していたらしい。敷布団の上に寝転がっていたが、すっかり弾力が失われて、床より多少ましな程度の柔らかさしかない。体をよじると、ギシギシと... 続きを読む
  •  このカフェで食事をとるのも、何回目かなとカインは思った。  クラシックな音楽が流れる店内には、五席のカウンター席と二人掛けのテーブル席が三つ。仕事前の腹ごしらえをするために立ち寄ったカインは... 続きを読む
  • 「今日も例年以上の暑さなんだってさ」  半袖、短パンといった元気な格好の妹が、俺にそう言った。服よりも髪に関心のあるお年頃らしい。腰まである黒髪を、ストレートにしている。俺はというと、タン... 続きを読む
  • 写真家の私は、最近どうもスランプ気味だ。 この一年は、「緑」というテーマでひたすら緑色の被写体を捉えてきたが、さすがにウンザリしてきたのだ。最近は、木の一本だって見たくない。近所の公園にすら行... 続きを読む