新着のショートショート一覧

  • 「ねえ、主様。雪とは、本当に綺麗なものと思いんすか?」  絹の夜着に溶けた温もりの向こうで、女の声がゆるく飽和する。遠くで聞こえる衣擦れに瞼を開けると、窓辺に坐した花魁は街を見下ろして小さ... 続きを読む
  • 波打ち際を訪れたその人は、劣悪な環境の海の中で必死に生き延びようとする小魚たちをみて、胸を痛めた。 足下に水槽を沈め、「ほら、ここへお逃げなさい。わたしが定期的にご飯をあげましょう。ここは天変... 続きを読む
  • ある日、コンピューターウイルスが世界中に撒かれ、その威力に負けた国々の経済が崩壊した。 世界の名だたる富豪たちは、一晩で無一文になった。 紙幣が奪われたのではない。 世界に控えられた金融デ... 続きを読む
  • 暗くした部屋で君と二人だけ。 唇を重ねると二人の頬は今更赤らんでいった。 すべての輪郭が少しずつぼやけて溶け出していく。 互いの熱が冷めるまでぶつけ合って、丸く収めたところでまた燃え盛った... 続きを読む
  • 「その髪飾り、彼岸花か?白いものがあるとは聞いた事が無いが」 「あい。先日馴染みとなった呉服屋の若旦那が、『白い彼岸花は珍しいんだ』『きっと月下香に似合うから』とわっちに贈って下さいんした。…... 続きを読む
  •  死んでしまおう。  一度生まれたその真っ黒な感情は、無色透明な水にポタポタと墨汁を落とした時のように、徐々に、そして確実に、私という人間を真っ黒に侵食していった。  私は近所の山の奥にある... 続きを読む
  •  日付が変わる間近のワンルームで、秒針の滲む静寂が刻一刻と飽和して行く。  窓辺に活けられた赤の山茶花とフユサンゴが、物言わぬ月影に濡れて佇んでいる。その手前…ぼんやりと浮かぶ真白のローテーブ... 続きを読む