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『
雪芥、塵華
』
槻坂凪桜
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「ねえ、主様。雪とは、本当に綺麗なものと思いんすか?」 絹の夜着に溶けた温もりの向こうで、女の声がゆるく飽和する。遠くで聞こえる衣擦れに瞼を開けると、窓辺に坐した花魁は街を見下ろして小さ...
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『
新世界の魚たち
』
小枝 さと
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波打ち際を訪れたその人は、劣悪な環境の海の中で必死に生き延びようとする小魚たちをみて、胸を痛めた。 足下に水槽を沈め、「ほら、ここへお逃げなさい。わたしが定期的にご飯をあげましょう。ここは天変...
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『
お金と引き替えに
』
小枝 さと
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ある日、コンピューターウイルスが世界中に撒かれ、その威力に負けた国々の経済が崩壊した。 世界の名だたる富豪たちは、一晩で無一文になった。 紙幣が奪われたのではない。 世界に控えられた金融デ...
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『
あなたが手向けた黄色の水仙
』
からん
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暗くした部屋で君と二人だけ。 唇を重ねると二人の頬は今更赤らんでいった。 すべての輪郭が少しずつぼやけて溶け出していく。 互いの熱が冷めるまでぶつけ合って、丸く収めたところでまた燃え盛った...
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『
華蜘蛛
』
槻坂凪桜
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「その髪飾り、彼岸花か?白いものがあるとは聞いた事が無いが」 「あい。先日馴染みとなった呉服屋の若旦那が、『白い彼岸花は珍しいんだ』『きっと月下香に似合うから』とわっちに贈って下さいんした。…...
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『
ワタシ(プロローグ)
』
とこ
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死んでしまおう。 一度生まれたその真っ黒な感情は、無色透明な水にポタポタと墨汁を落とした時のように、徐々に、そして確実に、私という人間を真っ黒に侵食していった。 私は近所の山の奥にある...
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『
11月16日
』
槻坂凪桜
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日付が変わる間近のワンルームで、秒針の滲む静寂が刻一刻と飽和して行く。 窓辺に活けられた赤の山茶花とフユサンゴが、物言わぬ月影に濡れて佇んでいる。その手前…ぼんやりと浮かぶ真白のローテーブ...
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