『ネコはエコ』

ネコはエコだ。存在が地球に優しい。

ひどく疲れ、理不尽の雨に濡れて帰った日も、いつもと変わらない立ち振舞いで僕を落ち着かせてくれる。
「エコぉ、聞いてくれよ。課長ったらひどいんだ。『責任は俺が取る』って言ってたのに蓋を開けたら全部俺のせいになっててさぁ」僕はご飯をフーフー冷ましながら言った。
「次何かあったら減給だってよ。あんまりだろ?おれなんも悪くないのにさぁ」フーフー。僕は猫舌なんだ。エコは自分の飯をガツガツと食べていて、見向きもしない。このまえ少しいい餌を買った。チキンがたくさん入ってて良質なタンパク質が摂れるやつだ。
「エコ、うまいかそれ。うまいだろ」
ガツガツガツ。話しかけても基本無視だ。まぁそれもかわいい。

さて、明日も早いしもう寝るか。暖冬だった今年もようやく寒くなってきた。僕は寒いのが苦手だ。しかし救世主がいる。布団乾燥機だ。こいつを就寝二十分前に付けておけば恐いものなし。ぬくぬくでいつの間にか夢の中だ。乾燥機のスイッチを入れるのはエコの仕事。ホント、こいつ頭がいい。ぬくぬくが好きなのかエコも必ずといって入ってくる。エコと二人で入る布団は温風による温かさだけでなく、心も温まるんだ。
「エコ、おやすみ」

ぐぅ〜っと僕は伸びをした。朝一番の水を飲み頭を覚ます。ベランダの外は冷たそうな木枯しが葉を揺らしている。
「さぁて、今日も頑張りますか」身支度をして布団に目をやると、エコはまだぬくぬく寝ているようだ。
「いいよなぁ、人間は。毎日ぐーたらしててさ」布団がゆっくり膨らんだり萎んだりしている。
「エコ、今日もお前の餌代を稼いでくるよ」
そういいながら僕はネコ用の玄関をすり抜けた。外はやっぱり寒い。全身の毛が逆立ち、僕はブルッと身震いをした。本当に寒いのが苦手だ。僕は玄関を出てすぐ左側の塀をヒョイっと乗り越えて職場へ向かった。

この短編小説にはまだコメントがありません。
ぜひ一番最初のコメントを残しましょう。