純文学

  • 私は真っ暗しか知らない。 なんでかって? 確かに工場の中は一瞬見たけど、透明なフィルターに包まれて、箱の中に引きこもってずっと待ってる。 前と後ろでぎゅうぎゅうに詰められるから息苦しい。 ... 続きを読む
  • 男の爪るもん
     男は、生まれたときから怒っていた。常に怒りを持て余していた。  たいそうな癇癪もちであった男は、いつも周囲に疎まれていた。遠ざけられ、嫌われ、不審がられ、男はなぜ自分がそのような扱いをされる... 続きを読む
  •  歩いていた。    どこに?よくわからない。  ただ歩いていた。暗闇の中を黙々と。  意味なんてあるのかな?  そう問う声があった。  至極まっとうだ。  だ... 続きを読む
  • シロは、半年前に灰になった 一本の動画と、手紙を残して。 私の家は喫茶店を営んでいる。 珈琲の香りと使い込まれた木の家具たちが心地好い。 祖母が始めたこの... 続きを読む
  • 桃太郎の周りには、彼が桃から生まれたという理由で偏見を持つ者はいなかった。 皆桃太郎に優しかった。 生まれが桃なんておかしい、僕はきっと人間じゃないんだ、と桃太郎が言うと、おじいさんとお... 続きを読む