『癖』

季節は冬。そしてここは雪国だ。
中学生の少年がいた。少年は寒さが苦手だった。寝ている間に最も嫌な瞬間が訪れるときがある。それは尿意で起こされたときだ。
そんな時、少年の心の中は葛藤の嵐が吹き荒れる。
「起きてトイレに行こうか?」「いやいや我慢できるはずだ。」「でも漏らしたら恥ずかしいし母さんに叱られてしまう。」「眠ってしまえば問題がないはずだ」

こんな風に考えれば考えるほど、尿意は激しくなり、少年は嫌な気持ちで仕方なくトイレに赴く。それがいつものことだった。

しかし、少年はあることを境に尿意に襲われても眠り続けることができるようになった。
それは少年がオムツを履いたことだった。
オムツの使用により、布団の中で尿意を催しても我慢せず、しかも布団も汚さず眠り続けることができた。

「なんで今まで気づかなかったんだ!」「オムツを履いていたってズボンの上からじゃ見えやしない。」「しかも最近のオムツは何という吸水性の良さだ!何というサラサラ感だ!これは文明の進歩とも言える逸品だ」

と少年はとても感激した。寝る前に履き、寝ている間に尿意が来たらそのまま出す。それが少年の習慣になった。
初めの方は尿意に起こされると意識的にオムツへ出すことをしていたが、今となっては慣れたもので寝ながらにして尿意の解放ができるようになった。

少年は眠っていた、尿意を催したらしくいつものようにオムツへ出した。この日の少年はとても素敵な夢を見ていた。ものすごい数の人が自分へ惜しみのない拍手と称賛をしてくれている夢だったからだ。その理由は分からないがとても良い気分だった。

ところがいつもと違ったことがある、起こされたのだ。
目の前には怒った顔の教師。聞こえてくるのはたくさんの笑い声。感じたのはジメッとしたズボン、、、

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