『見ちゃった男』

「なぁ俺見ちゃったよぉ…」
「え、なにを?」
友人のCが突然何か言い出した。
「いやぁ、さっきお前の家のトイレ入った時によ、たまたま上を見上げたんだよ。そしたら、天井の割れた間から目が見えたんだよ〜。驚いて飛び出してきたけど目が合っちまったじゃねぇかよぉ」
「いや、俺の家でなに勝手に見てんだよ。家帰れねぇじゃねぇか」
「いやキレることかよ。俺の方が嫌なもん見ちまった被害者だよ。霊感とかねぇと思ってたのに…」
Cは少し怒って反論してくる。
が、もちろん被害者はこちらだろう。
これであの家には帰れなくなってしまった。
「まぁあのボロアパートからそろそろ引っ越そうと思ってたからいいけどよぉ。匂いもきついし」
「そうか?匂いはわからねぇけど。てか、俺お払いとか受けなくて大丈夫かな?」
Cの言葉に俺は少し戸惑った。
「え、お払い?うーん…あ、お払いか…」
「いやそんな考えることかよ…」
「いやでもお払いとかしなくても俺は毎回問題ないけどなぁ」
「お前は耐性ついてるかもな」
その言葉に俺もCも笑った。
「まぁそれならいいや。なんかしてくる感じの奴でもなかったし」
「いやそりゃ何もしてこねぇよ。してきたら怖いよ」
そう言って俺は笑ったが、Cは少し戸惑った表情で笑みを浮かべていた。
「あ、それより俺そろそろバイトだから行くわ」
そう言ってCは飲みさしのジュースを飲みきると伝票を持った。
「ここ俺払うよ。ゆっくり飲んで帰って」
「ああ、ありがとう」
Cはレジのほうに向かって行った。
気前がよくていい奴なのに残念だ。
それにしてもCは人の死体見ておいてあんなにニコニコ喋るとかサイコパスか?
というより、襲ってくるとか霊感ってなんだよ。
でも、あいつ俺にわざわざ殺してくれって言ってるようなこと言うとかことごとく不思議な奴だ。
警察に言うぞ?っていう脅しか?
「はぁ…また新しい包丁とか用意しなきゃなぁ…」
そう言って俺はCに電話をかける
「あ、もしもしバイト終わりひま?また家に来ない?…

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