『【真夜中の御茶会にて】「たったひとつのねがいごと」』

あの子。

知ってる、アリスだ。今日もやってきた。

女王様には決して誰もかなうはずないのに、すごいなぁ。

私と、私にそっくりなトランプ兵は今日もあの子の背中を追いかける。

すごいなぁ、すごいなぁ、あの子。

「お前に役割を与えてやろう」

私は、ラプンツェルというお姫様になった。

すごい、すごい!人間の女の子のからだだ!

ラプンツェルは、ほんとうはすごく髪の毛が長いお姫様なんだって。

歌を歌って、王子様と結婚するんだって。

アリスが夢をみた。

お姫様っぽくないともだちがほしいんだって。

変な子だなぁ。

お姫様っぽくないって、どうやったらいいんだろう?

「あなたはそのままでいいと思うわ、お似合いよ」

白雪姫役のトランプ兵がそう言った。

あの子はいつもすました顔をしている。

女王様がこわくないのかな。

あの子は少し女王様に似てる感じがする。

「悪いやつじゃないんだ、怖がらないでやってくれ」

シンデレラ役のあの子は、ちょっと乱暴な言葉づかいなのに

とてもやさしい声がする。

きっと、二人はとてもなかよしなんだ。

いいなぁ、いいなぁ。

私もアリスとなかよくなれるかな?

アリス。

アリス。

アリス。

待っててね。

あなたの望んだ私たちが、もうすぐ会いに行くよ。

これは、いつかおわってしまう幻かもしれないけれど。

どうか、すてきな夢を。

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