『宇宙人の会話』

ー正直に話そう。私は地球人でない。
ーほう。
ー驚かないな。
ーこれまでの人生で、いろいろな人間に会っているからな。今さらびっくりしないのだ。で、あんたはどこの星から来たんだ。
ー私はタンス星人だ。
ータンス星? シャツやパンツをしまっておく、あのタンスか。
ー地球ではそんな物をしまっているな。タンス星人は、タンスを修理するのが仕事なのだ。
ーそれはちょうどいい。俺のタンスの引き出しの上から2段目が、開きにくくなっている。修理してくれないか。
ーいいとも。

しばらくして。
ーできたか。俺のタンスはどこだ。
ーこれだ。きれいに修理してやったぞ。
ーあっ。ばらばらの木切れになってるじゃないか。ひどい。壊したな。修理すると言ったのに。
ータンス星では、『修理する』といったら、バラバラにすることなのだ。それから、こうするのだ。
ーああっ。食ってしまった。俺の大事なタンスを。700年前に作られた国宝級のタンスだったのに。
ーことばの理解は、それぞれの人種で違うものだ。諦めろ。
ーうーむ。やむを得ん。俺の早合点だった。お詫びに、労をねぎらいたい。お茶でもいかが。
ーありがたい。ちょうどのどが渇いていた。いただこう。

30分後。
タンス星人の死体が、床に転がっていた。
ー死んだか。地球に来てからちょうど30人目の毒殺者だ。話してなかったが、俺は毒盛り星人。毒盛り星では、『労をねぎらう』と言ったら、毒を盛ることだ。他人に毒を飲ませて殺すのが、
毒盛り星人の仕事なのだ。
皆が殺しあっていたら、誰もいなくなってしまった。最後に生き残った俺は、地球にやってきた。定年退職するまで、毒殺の仕事を続けなければ。

毒盛り星人は、部屋から出て行った。

ドアが閉まると、転がっていたタンス星人の死体が、むっくり起き上がった。
ーやれやれ、ひどい目にあった。言ってなかったが、タンス星人は不死身なのだ。何度病死しても、殺されても、よみがえってしまう。

タンス星人は、口からタンスの木切れを吐き出すと、器用に組み立てた。
あっという間に、木切れはタンスに戻った。

ーよみがえるのは、タンスも同じだ。700年前に作られたというこのタンスも、どうやら以前、タンス星人が修理してよみがえらせた形跡がある。

タンス星人は大きく伸びをした。
ーさて、新たなタンス修理の仕事を探しに行くか。死ねないことも、因果なことだ。
ため息をひとつつくと、部屋を出た。

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