『彼と彼女と1』

放課後、帰ろうと靴箱に上履きを入れる。もうほとんど生徒は残っていない。しかし入り口の所に一人女子生徒が立っている。
「先輩、帰らないんですか?」
自分の発した声は届いたはずだが彼女は振り返らなかった。隣に立つと、なるほど。
「雨、降ってますね。天気予報では言ってなかったのに。」
困った声を出すと先輩は空を見上げる。
「あれ、ほんとだ。」
雨が降っているから帰らなかったわけではないようだ。
「先輩持ってきてるんですか?傘。」
俺の問いに先輩は不思議そうな顔を向ける。
「傘?ああ、ないけど。一緒に帰らない?」
唐突な提案に目を瞬かせる。
「俺も傘ないですよ?」
申し訳なさそうに答えると先輩は首をかしげる。
「ん?別にかまわないわよ。」

雨は強くない。しかし着実に制服は濡れていく。しかし、二人はたわいもない話をしながらのんびりと下校する。

甘酸っぱいですね