『やじろべぇ』

「あなたが私をどれだけぞんざいに扱おうが、
あなたがどれだけ私を縛ろうが、
私を愛の牢獄に閉じ込めていてくれさえすれば、私は世界の一部さえ知らなくても構わない。」

 彼女はいつも怯えた表情を崩さない。自分自身の価値は無に等しいと考えているからだ。
だからこそ、彼女は他からの承認を求めている。それがこの世で用をなさないことを知っているのにも関わらず。

「僕はね人間の考え方はどのような価値観で生き、どんな最後を迎えたいかで、すべてが決まると思っているんだよ。
だけど、僕は君の価値観や望む終わり方を知らない。
だが、君が僕の全て受け入れると言うのであれば、君には僕の世界を見る権利があるんだよ。」

 彼もまた無意識のうちに怯えている、自身より弱い者に執着され仮初の優越を味わう事で、彼の尊厳は保たれていたのだ。
だが彼は、自身が擁護していると思っている対象に自身が守られているに違いないつまり彼らは一方が執着をしてるよう見えてお互いがお互いに執着し合っていたと言う事だ。
滑稽だ。

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