『大切な人が目の前で殺されました。』

「復讐は何も生まない!」
そんな戯言を言っていたのはいつまでだっただろうか。
そうだ、大切なあの人が殺される前のあの時までだ。
他人の復讐を止めようとして、私の大切な人は殺された。
復讐は、1人の亡骸を生んだ、私の憎悪を生んだ。
復讐は何も生まないなど嘘だ。
そんなものは復讐を知らない偽善者の言葉だ。
復讐が何も生まないのならば何故私は憎んでいる?
何故こんなにも私は、私の大切なあの人を奪った奴を殺したい気持ちで埋め尽くされている?
私は許せない。
だから私は奴に復讐する。
私の大切なあの人を奪った奴を殺す。

とうとう奴を追い詰めた。
奴も私の復讐を受け入れる準備ができているようだ。
だがそこには2人の邪魔者がいた。
そいつらは愚かにも、「復讐は何も生まない!」などとかつての私と同じことを私に言ってきた。
ああ、可哀想に。
この子たちはまだ復讐という者を知らないのだ。
復讐が何も生まないというのならば自分で証明して見せるがいい。
こうして私は私の大切な人を奪った奴と、私に「復讐は何も生まない!」と言っていた2人の邪魔者の内の1人を殺した。
復讐を果たした私は静かにその場を去った。
その後ろからは私への憎悪を叫ぶ声が聞こえた。
大切な人を奪われたあの子は私に復讐するだろうか...

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