『グッド・ラック』

一杯のコーヒーと一匹のネコ。
それだけで人生は満ち足りる。
もう少し欲を言うならば
朝陽に輝くコバルトブルーの海。
目覚めた瞬間バルコニーから
眼前に広がるオーシャンビュー。
そこから映る世界は、
もっと眩しいものだろう。
残念なことにアパートから望める景色は
無機質なコンクリートジャングル。
人々は昼夜問わず無表情で行き交う。
誰もが無関心を装い、それぞれの目的地を目指して歩いていく。
そんな場所。
ネコを抱き抱え、コーヒーを啜る。
あの人はまだ夢の中。
嫌いじゃない この空間。
でも私の居場所には、ならなかった。
さようなら。もうここには戻ってこない。
大丈夫。
私にはコーヒーとネコがいればそれでいい。

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