『勇敢と無謀』

戦争から帰ってきた2人の男がいた。

1人の男は英雄と呼ばれ、もう1人の男は悪魔と呼ばれた。

英雄と呼ばれている男がとった行動は人々から勇敢な行動だと称賛され、
悪魔と呼ばれている男がとった行動は人々から無謀な行動だと罵られた。

けれども、2人の男がとった行動に本質的な違いは無かった。

両者とも戦争の最中に戦地から逃げてきた一般人を助け、亡命を補助したのだった。

戦地から逃げてきた人々は他国から追われていて、引き渡しを要求されていた。

2人の男の国からの命令は引き渡しに応じることだった。

しかし、2人の男は自分の独断で人々を逃した。

1人の男が逃した人々はその後無事に安全な地に辿り着き、
戦争終結後に、男がとった行動は逃がしてもらった人々の感謝と共に世界に知れ渡った。

こうして、男のとった行動は勇敢な行動として人々に語り継がれ、男はいつしか英雄と呼ばれるようになった。

ではもう1人の男が逃がした人々はどうなったか。

人々は男に逃してもらったおかげで先を目指すことが出来るようになった。
しかし、人々が逃げた先には人々のことを追う国の兵士が先回りして待ち伏せしていた。

人々の大半は無慈悲にも兵士の手によって命を落とし、この出来事は史上最悪の虐殺事件として後の世に語られることとなった。

だが、これだけでは終わらなかった。

要求を無視した形となった男の国は要求を出していた国からの報復攻撃を受け、甚大な被害がもたらされた。

男に逃してもらい、待ち伏せしていた兵士からもなんとか逃げ延びた人々は男に感謝の意を示したが、

男の国の人々は男のとった行動を後先を考えない無謀な行動と批判し、男を国に甚大な被害をもたらした悪魔として語り継いだ。

こうして、1人の男は英雄として、もう1人の男は悪魔として語り継がれることとなった。

勇敢と無謀。

その違いは一体何処にあったのだろうか。

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