『Ivy』

「…あれ、観葉植物なんて育ててたっけ?」

 何となく目を移した窓際に見慣れない緑を見付けて、僕は思わず声を上げた。隣で珈琲を飲んでいた彼女は「ああ…言ってなかったね」と苦笑しながら窓辺へと歩み寄る。

「…最近、買ったの。ほら、私達…付き合ってもうすぐ1年でしょ?その記念に何か…って考えた時、この植物の事を知ったの」

 細い指先に触れる緑。白に縁取られた星のような葉は、昼下がりの光を透かして指の白と交わって…。

「アイビー、っていう植物なの。…ヘデラって言い方の方が広まってたりするのかな?最近ではブーケに使われたりする人気の花で…そこにあるものにしがみついて這って行く生態から、花言葉が『永遠の愛』『不滅』みたいに、より深い繋がりを表してるの」
「…素敵だね」
「でもね、それだけじゃなくて…アイビーには少し怖い花言葉もあるの」
 慈しむような視線はそのままに、白昼に滲む優しい微笑みはその細い指をゆっくりと滑らせる。

 細い茎に指を絡める彼女は、どこか恍惚とした笑みを浮かべているようにも見えて。
「…どんな花言葉?」
 問うてみれば、彼女は…何事も無かったかのように、見慣れた笑顔で僕に笑いかけた。

「それはね…『死んでも離れない』」

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