『夢の果てに』

「同じ夢を見るのも今日で2日目か」
僕は、布団の中でもぞもぞと動きながらつぶやいた。
カーテンの隙間から陽が差しており、まだ頭が覚醒していない中身体を起こす。
目覚まし時計に手を伸ばし時間を確認したところ8時を過ぎたところだった。
朝食の準備を手早く終え、テレビのニュースを観ながら朝食を食べ始める。
テレビからは、連日未知のウィルスが世界に蔓延し猛威を振るっていると報道されている。
「そろそろテレワークの準備を始めないと不味いな」
未知のウィルスが流行したことを受け、1週間前から業務をテレワークで行っている。
業務開始は、8時半からだ。
急いでテレワークの準備を行い、始業時間から業務を開始する。
業務の合間に、ふとっ今日の夢を思い出す。
学生時代に仲の良かった女友達と一緒に帰宅していた。
女の子は、僕よりも背が低く小柄でショートが似う人懐っこい子だった。
この2日間いつも帰り道の途中で、僕から話をしようとすると目が覚めてしまう。
今日もし同じ夢を見ると3日連続になってしまう。
「今日も同じ夢をもしかしたら見れたりしてな」
椅子に背中を預けるようにして、斜め上を見上げる。
僕は、幼いころから毎日のように夢を見ていた。
夢の中で、数年に1度同じ夢を立て続けに見ることがある。
そのような連続した夢を見たとき、夢の内容が現実で再現され正夢になることが多かった。
たまにないだろうか、この景色観たことがある。この場所には訪れた事があると錯覚するような現象だ。
今までの生きてきた中で、それは8回発生し今回で9回目となる。
「今日も同じ夢を見ると、明日正夢になるかもしれないな」
もし同じ夢を今日も見ることが出来るなら彼女に話そうと思っていたことがある。
それは、彼女への謝罪だ。
学生当時、彼女に対して関節的に放った言葉を冗談と捉えてもらえず彼女を傷つけてしまった。
それ以降彼女と話すことはなくなってしまい、気が付けば30代へと突入してしまった。
十数年経ってしまったが、夢の中でも機会があるのであれば謝罪しておきたいところだ。
テレワークが終了し、陽はまだ上がっていたため近くの神社に足を運ぶことにする。
不要不急の外出は控える必要もあるため、神社ではお祈りだけを済ませる。
その後、夕食を終えいつも通りテレビやSNSをチェックしているとあっという間に寝る時間だ。
寝る前にこんなに緊張することは数えるぐらいしか覚えていない。
「明日が休みなのが幸いだな」
布団の中にもぐり込み、静かに眠りに落ちていく。
夢の中では、昨日と同じ情景と隣には女友達がいる。
いつもどおり彼女は、楽しそうに話をしており一時の沈黙が訪れた。
「ここで話さないといけない。彼女に伝えたかったことを。」
小さく心の中で念じる。
彼女へ告げると決めていた謝罪の言葉。
僕はちゃんと話せているのだろうか。
気が付けば、僕は立ち止まって何かを話している。
ただ、その声は聞こえない。
彼女は、話を背中越しに聴きながら僕の数歩前を歩く。
ふとっ彼女が立ち止まり、こちらを振り向く。
一瞬笑ったような気がしたが、そこで目が覚めてしまった。
外は、もう明るくなっており時間も9時半を回ったところだった。
「伝えたかったことを伝えられたのだろうか」
夢の中で伝えたかったことを伝えられたのかはわからない。
いつも通り朝食の準備をし、テレビをつけスマートフォンに手を伸ばした。
いつも使用しているSNSを起動しようとしたとき、普段使用していないSNSのアイコンに反応がみられた。
不思議に思ったため、そのアイコンを試しにクリックし内容を確認してみた。
そこには、連日夢に登場していた彼女からのメッセージが届いていた。
内容としては、夢の中で昨日僕と学生時代のような形で一緒に帰っていたこと。
学生時代に彼女が傷ついてしまった原因に対して僕から謝罪を受けていたことが記載されていた。
最後に、良ければ今日SNSを通してテレビ電話をしてみないかとのことだった。
連絡先は、SNSの同じ学校検索機能から名前を検索し連絡を行ったとのことだった。
一緒に歩いて話すということは正夢にならなかったが、昨日観た夢の内容と同じものを共有出来たようだ。
これが神社への参拝が影響したのか、3回連続で同じ夢を見た回数に繋がる数字のマジックかはわからない。
僕は2つ返事でメッセージの返信を行い、彼女からの返信を心待ちにするのであった。

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