僕は、お店で買い物をしている。
そのお店の中に一つだけ、見慣れない店があった。
「……あれ、このお店、時計しか置いていないな……?」
僕は好奇心に負けて、お店の中に入っていった。
「いらっしゃいませ」
そこにいたのは、よぼよぼのおじいさんだった。
「あの、ここって……」
「ここは、『時計専門店』でございます。どんな時計でもありますよ」
「どんな時計も、ねぇ……」
『取んな時計も』その言葉に、僕は食いついてしまった。
僕はおじいさんに、
「じゃあ、時間を戻す時計、なんかもあるんですかぁ?」
と、ふざけて言ってみた。
すると、おじいさんはにこりと笑って、
「ありますとも、ありますとも。今持ってまいりますね」
「え」
面白半分に言ってみただけなのに。
僕は店をまわって、時計をぐるぐる見ていた。
『時間を進める時計』、『時間を止める時計』なんかもあった。
時計だから、時間に関係しているのだろうか?
しばらくすると、店の奥から、さっきのおじいさんが時計を持ってきた。
「お待たせしましたお客様。こちらが、『時間を戻す時計』でございます」
それは、何の変哲もない時計だった。
僕は「ふっ」と笑って。
「あっははは!ただの時計じゃんこれ!でも、確かめてやる!買った!何円だ⁉」
僕は、自分のポケットから財布を取り出した。
「あぁ、お代はいただきません。ありがとうございました―――」
「……あれ?」
気が付けばそこは、あのお店はなかった。
手には、時計が一つ。
「……なんだったんだ……?」
僕はとりあえず家に帰って、早速その時計を使ってみることにした。
「えっと、じゃあ、この間のテストの点数が悪かったから、テストの前にしよっと!」
すると、時計は勝手に回りだした。
「なんだなんだ⁉……って、ここは……」
そこは、学校だった。
机には、テストが置いてある。
「……よっしゃ!」
僕はテストの問題をすぐに解いた。簡単すぎた。一度問題を解いているから。
そして、記憶の中から嫌な記憶を探り出してそこまで戻し、良いことがあったらその時間を繰り返し、遊んで、戻して、やり直して、戻して……。
そして、僕の中の時間で、一か月がたった。
僕は……
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「おぎゃあああああ」
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