『彼女と子ブタと美術室』

美術のレポートを出すために、放課後美術室に向った。
夕日が射し込み、オレンジが室内全体を彩り、そして美しく燃えているように見える放課後の美術室に彼女はいた。
「先生はいないの?」
「職員室に戻ったけど、でももうすぐで戻ってくると思う。」
「そうなんだ。」
「レポート提出しにきたの?私が代わりに提出しておいてあげよっか?」
「いいよ。だってあの先生自分で提出しにこないと未提出だとか言いそうだもん。」
「そっか。わかった。」
彼女は教室にある観葉植物のデッサンの途中で、陰影、量感、質感に0に近い私の美的感覚を揺さぶり、脳の奥底で淡青色の光がパッ!!と光るような感じがした。
「下手だから、あんまり見ないで。」と彼女が腕で絵を隠すから、「めちゃめちゃうまいじゃん。」と言ったが安っぽい褒め言葉しかでない自分に凹んだ。
「デッサンじゃないんだけど、見てほしいものがあるの。」と言って、隣にある美術準備室に行ってしまい、放課後の美術室にひとりぼっちされた。
4つ足の木製の椅子に座り観葉植物のデッサンを見ていると、誰かが制服のズボンの裾を引っ張っているのを感じ、そこを見るとピンク毛にブラックの斑点がある子ブタがそこにはいた。
子ブタが美術室いるの事に戸惑っているが、すぐにそれを超える事が起こった。
「ちょっとついてこい。」この小さな生物から発せられたと思えず、時間が止まったような感覚に陥った。
「ついてこいと言っているんだ。少年。」完全にこの生き物から発せられたと思った瞬間、この子ブタが恐ろしくそして黒い斑点は不気味に見えた。
「エッ?なんでしゃっべてるんだよ。このブタ。」
「びっくりしているのか少年。まぁそれはよい、ついてこい少年。」
どんどん進んでいく生物あっけにとられ、只々唖然と立っていると「ついてくればわかる。悪いことはしないよ。」と私の方向を振り向きそう言ってまたあるき始めたので、意を決してついていくことにした。
ついていくと美術準備室にその子ブタは入っていき、私も続いてその部屋に入った。
彼女がそこにはいて、子ブタを見て「なんで出てきちゃダメでしょ。」と言って子ブタを軽く叱った。
準備室の中はアトリエになっていて、油絵具 なのか水性絵具だかわからない塗料のツーンした匂いが充満していて、風景画や人物画のような絵があたりを飾ってあった。
「この子ブタ知っているの?」
「この子は、私の友達。」
「そうなんだ」
この言葉にあまり深いと意味を持たず流しすと、彼女は「これを見てほしいの」と彼女がニ歩三歩よこに移動すると、イーゼルに風景画が載せてあった。
そこにはヨーロッパの田園のような風景画広がり、手前には動き出しそうな躍動感のある草原、そして、中央には石造り家に奥には雄大な山々が広がっており、広大で美しい青空は絵をより大きく見せる。
そんな風景画に目を奪われていると、絵の中央から黒いシミができ、どんどん大きくなり私達を飲み込んだ。
目を開けると、さっきまで二次元だった世界に私がいることに気づいた。
彼女は笑顔で「どうこの場所とても綺麗でしょ?」と言い、子ブタは「どうだ美しすぎて声も出ないか。」とどこか誇らしげに私に話した。
私はの頭はパニック状態で、七色の爆発がずっと頭の中で起きているみたいだった。
見渡すとさっきまではあの絵の具の匂いが充満する部屋にいたのに、今は空気を体内に入れたら出したくないほど最高の空気のある環境にいる。
彼女は一度手招きをして、石造りの家の方向に行こうとしている。
子ブタも彼女の後ろについていったので、私はここにひとりで取り残されるわけには行かないと思い、アヒルの雛が不安そうに親の後ろ歩くようについていった。
家の中に入ると窓から差し込む太陽の日差しが、私の体全体を貫く、床も壁も感情がないくらいの白銀で部屋はたくさんの光を飲み込んで、それを満を持して私にぶつけてきたような気がした。
光に目がなれ周りを見渡すと、中央に木製のダイニングテーブルとそれを挟むように木製の椅子が2つ、そして部屋の隅には木のタンスが出迎えた。
彼女は木製の机の上に置いてあった白いスケッチブックを手にとると子ブタに向って「そろそろ戻りなさい。」というと子ブタはスケッチブックに飛び込んでいった。
まるでプールに飛び込むように、水しぶきのような光が入っていく子ブタを赤ん坊を抱きかかえるように受け止めた。
スケッチブックを見るとそこにはさっきまで私達と行動を共にした子ブタがそこには描かれていた。
私の体は混乱と興奮に乗っ取られ「今のはなに? どんなマジック?」と、どうかしてしまいそうな体を必死に操作して彼女に聞いた。
彼女はそんな狂った私をはにかんだ笑顔で見ていて「そんなに驚くこと?」とまるで驚いている私がおかしいみたいなリアクションをした。
「だって、さっきまで一緒にいた子ブタが絵になったんだよ。」
「ここでは普通のことだよ。だってあなたも絵の中に来れたじゃない。」
「そうだけど、でも目の前でさっきまで生きていた生物が絵になったのに平然としてられないよ。」
私は少し口調を荒げながら言うと、彼女は子ブタの描かれたスケッチブックに何やら描いていた。
「会話の途中だろ。話しを聞けよ。」
彼女は「できた。」と言うと絵を見せると、スケッチブックからカメラのフラッシュのような光を出すと、私の前には金色の鬣が美しく輝く勇ましいライオンがそこにはいた。
私はびっくりしてお尻から倒れ込むと「大丈夫か? そんなに驚かなくてもお前を食べないよ。」とライオンは私を心配してくれた。
「ここではこういう事が当たり前なんだよ。」と彼女は情けない姿の私に言う。
「そうなんだ。こういうのが当たり前なんだ。」私は必死にこの状況を頭にねじ込み、このワンダーランドを理解しようとした。
彼女は私を楽しませようとしているのか、どんどん描いてはスケッチブックに戻した。
白銀の毛と屈強な体のホッキョクグマ 、ベンガルトラの優雅な一挙手一投足に酔いしれ、丸太のような腕を持つゴリラに脱帽した。
そんな事が眼の前で繰り広げれ、私はこの状況に混乱や戸惑いは氷が溶けるようになくなっていた。
「どう?ここ最高に楽いでしょ。」彼女は満面の笑みで私に聞いてきた。
「ここは最高に楽しい。でももう帰らないとレポートも出さないと行けないし。」
「そっか、そうだよね。」と彼女は下を向き悲しい顔しながら木のタンスから一つを取り出してきた。
絵は美術準備室の風景画でアンティーク調の金の額縁に入れられていて、「ここから帰れるよ。」と彼女は悲しそうに言った。
「こんなにもすごいモノ見せてもらって本当にありがとう。」
「楽しんでくれて、私も嬉しい。一つ聞いていい?」
「なに?」
「私達、友達だよね?」
「当たり前だよ。また会えるよね?」私は恥ずかしながら聞くと、「また会えるよ。だって友達だもん。」と彼女は笑顔で答えた。
彼女の手に持っている風景画に手を伸ばすと、彼女は手に持っている風景画を乱暴に捨て、スケッチブックを私の手にぶつけるようにあてた。
まばゆい光が私を飲み込んでいき、飲み込まれる私を見ながら彼女は笑顔で「またこれで会えるね。だって私達友達だもんね。」と言った。

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