これは、不思議な場所に迷い込んだAとBのお話。
「そこにいるのはB?」
「おお、そうや!無事やったかA。」
「よかったぁ!僕だけじゃなかったんだ。一体ここはどこなんだろうね?」
「わからん。みんなとも、はぐれてしもたな。みんな無事やったらええけどな。」
「そうだね。早くここから出る方法を探そう。」
「せやな。・・・ん?A危ない、後ろや!」
「え?」
Aが後ろを振り向くと、白くて丸い化け物が大きな口を開け、Aを丸呑みにしようとしていた。
「なにやっとんねん、早よ逃げろ!」
Bはそう言うとAを押し飛ばして、Aを庇った。
その瞬間、化け物はBに噛み付いた。
「なんや、こいつは!」
Bが化け物に襲われている姿を目の当たりにして、うろたえるA。
「B!」
「ええから逃げろ!ここは俺に任せてお前だけでも逃げるんや!」
「で、でも・・・!」
「はよせえ!俺が、こんなところでくたばるわけないやろ!ええから早よ逃げろ!」
「わ、わかった・・・!」
Bの迫力に押され、Aは逃げることを決意した。
Aは逃げた。
走って走って走り続けた。
それは1分だったかもしれない。
あるいは1時間だったかもしれない。
それは、一瞬が永遠のように感じられ、
永遠が一瞬のように感じられる時間だった。
ここまでくれば大丈夫だろうか?
Aは立ち止まり、そして冷静になる。
Bは死んだのか。
自分も一緒に戦えばよかったのではないだろうか。
冷静になった頭が、Aの心を次から次へと絞めつける。
ごめんよ、B。
でも、たぶん僕ももうすぐ君のそばへ行くだろう。
「A・・・Aか?」
その声は、とAが振り向く。
Bだ。
Bが生きている。
「B!良かった、無事だったんだ。」
「ああ、なんとかな。まあ、おれにかかればあんなヤツ、敵ちゃうわ」
『なんとか勝った』と言いながら、『あんなやつ、敵じゃない』と言うB。
そう言えば、さっきも『お前だけでも逃げろ』と言ったのに、『俺がこんなところでくたばるわけない』と言ってたな…。
君が『くたばらない』のであれば、僕は逃げる必要ないじゃないか。
Bは、いい加減なやつだ。
でも本当に頼もしい。
「それよりな・・・たぶんやねんけど、さっきのやつと戦って、ここがどこか分かったかもしれんわ・・・」
そう言い出したBの表情は、これから訪れるであろう試練の険しさを物語っていた。
「今、俺たちがいる場所はな・・・」
こうして、ウイルスたちは人間の体内に迷い込んだのでした。
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