『カランコエはいつでも』

友人と2人、買ったばかりの中古の軽に乗って夜の浜辺へと出向いた。

浜風と潮騒。

寄せ返す波の音と水面の煌めき。
先客のはしゃぐ声。
暗がりに放り出された星屑。

吐いた息は暗がりに吸い込まれていく。
悴む手を擦り合わせる。

これといった用事があったわけではない。
ぼんやりとした将来、過去。
吐き出す度止まらない不満と期待。
そして、今。
取り留めもない、文字通りの世間話と世間体の話。
愚かにも特別ではない、愚かな僕たちによる、ただ僕たちが愚かであることを確認する語らいをしたのだった。

日が差して我に返る。
今まで何を話していたのだか。
水平線から覗く朝日の美しさに見蕩れてしまった。
もはやその一切を記憶として残すのは馬鹿馬鹿しく思えてきた。
このまま思い出さずに忘れてしまおう。

必要なのは語らった今日が確かに存在したことだ。
そしてその今日を共にしたのが君であったことだ。

日常に帰ろう。
またいつも通りを始めよう。

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