ある日、コンピューターウイルスが世界中に撒かれ、その威力に負けた国々の経済が崩壊した。
世界の名だたる富豪たちは、一晩で無一文になった。
紙幣が奪われたのではない。
世界に控えられた金融データが一気に吹き飛んだのだ。
これまでの富豪と一般家庭の持っている数字が等しくなると、頭のよい人たちは「お金」という仕組みそのものを「や~めた」と言った。
ウイルスを撒いたのは、紙幣からキャッシュレスに切り替えを促した人たちだった。
「お金」の制度をつぶすために、まず、世の中から紙幣をなくす必要があったのだ。
そして、キャッシュレス決済が当たり前になったのを見計らって、金融データを攻撃して、人々から「お金」を消し去った。
そのグループは、任務を完了して「やれやれ」と、ほっと胸をなで下ろした。
大半の人々は紙幣をまだ所有していたので、紙幣のお金をどうするかでもめた。
世の中平等に奪われよう、ということで、やがて紙幣も何の意味もなさなくなった。
お金を持っているだけの無能な人々は丸裸となり、「頭のよい」人が力を持つようになった。
「頭のよい」人たちの中には「よくない」人もいて、どうやって権力を持つか、新しい権力の持ち方をすでに考えていた。
その人たちは、人々の生命の弱みを握った。
病気のワクチン
食べ物の種
水
毒、その毒消し
人々が生きるために必要なものにひもをつけて、自分たちの元にたぐり寄せ、「分け与える」仕組みをつくった。
一部の人々は、分けてもらうことでしか生きていけなくなった。
それには、「お金」とは異なる代償を伴った。
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