『顧客のデビュー』

 ある日、友達のアマチュア・シンガーソングライターからデビューの切符をもぎ取ったと連絡がありました。でも友達は、そのプロダクションが詐欺じゃないかどうか怖いから、探偵である私にレコーディングに付き添ってくれと頼んできました。私は音楽の事は良く分からないが、詐欺じゃないか見極める自信はあると言って、快諾して現場に同行することにしました。
 当日スタジオに行ってみると、バックバンドの人やプロデューサー、事務所のマネージャー、レコード会社の人など色々な人が来ている模様でした。みんな期待している様子でした。
 レコーディングが始まりました。彼はピアノを弾きながらナンヤラ熱唱しました。みんな難しい顔をして友人を見守っていました。レコーディングな進むにつれ、曲の出来栄えでスタジののムードがだいぶ良くなって来ましたが、関係者は慎重な面持ちを崩しませんでした。レコード会社の人のタバコの本数もかなりの数を数えました。そのムードに耐えかねて、彼のボーイフレンドが大きな声でマネージャーに「これはかなり良いんじゃないっすか⁉︎いけますよね⁉︎彼はこの曲を書くのに、屋根に登ったり苔を蹴ったりしてかなり大変な思いをしたんですよ!ヒットすれば二人ですむ大きな家を買うって言って!どうですか⁉︎良くないすっか⁉︎」と尋ねました。するとマネージャは表情を崩してこう言いました。「先んじておめでとう!この曲は大ヒットナンバーになるよ!」と答えてくれました。
 こうして、ファーストシングル「Ordring a pizza」の収録が終わりました。私の見たところ彼らは詐欺ではありませんでした。その後セカンドシングル「Wieer Fire in her eyes」の収録スケジュールも決まりました。おめでとうございました!

以上

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