『サアカス』

「レディースエンジェトルメン!」
 いつものとおりのナレーションで幕が開く。

 スリルと事故は紙一重である。
 それがサアカスの醍醐味。

 彼は落下防止のネットなしで空中ブランコを演じる。幼い頃から練習を重ね、いまやベテランだ。しかし、年々客の反応が鈍っているような気がしていた。

 観客はそれ以上のものを求めているのか?
 それ以上のものとは何だ?

 そのとき、手が宙をつかんでいた。

 地面に叩きつけられた男に、割れんばかりの拍手と大きな歓声があがった。
 そして、いつ果てるともなく鳴り続けた。

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